ウイリアム・モリス No,3 [アート関連]
Red House
アーツ・アンド・クラフツの建築様式の愛好者が世界中から訪れるRed House
1850年代から公共の建築物によく見られたレンガによるゴシック様式を
住宅建築に持ち込みました。ウイリアム・モリスの夢はここに芸術家たちの
コミュニティーをつくることだった。
モリスはオックスフォード大学に在学中の20歳で高額な遺産を相続したこともあって
このような計画が実現できるもとになっています。
中庭にあって空間を引き締めているのは『とんがり屋根のある井戸。
憩いの場にもなっていました。
上層部の丸窓と一階の長方形格子窓がバランスよく配置されています。
井戸の後方の建物内部は階段吹き抜け部分。
残念なことにオリジナルの内装はダメージを受けたり
一部改装されてしまって建築当時と変えられてしまった部分もありますが
基本的な構造は保たれている。
当時、産業革命の流れで大量の工業製品が氾濫し彼はその製品には満足できずに
家具、壁紙、調度品、ステンドグラスまで自分で制作するという熱の入れよう。
当時流行してた文明への批判的な態度が根底あります。
巡礼者の休息所と名付けられた中庭のポーチ。
タイルも自身で制作した。赤丸部分にモリスのモットーとしている言葉が書かれている。
『もし、私にできるなら』の文字が。(ヤン・ファン・アイクの言葉に由来する)
この土地の環境は家と同じほど重要視していて周囲は果樹園(リンゴ、ナシ)に囲まれ
庭には四季折々の草花が咲き乱れる。
モリスはこの家を生涯の住み家にするつもりがロンドンで事業を始めたため通勤に不便で、
体力的にもきつく、遺産相続による配当収入の減少などの理由でロンドンに移り住むことになる。
その後所有者が数回変わって2003年にナショナル・トラストの所有になり現在に至っています。
モリスの手を離れてからは壁面に描かれた壁画の前にロッカーを作ってしまったり壁面の劣化のため
改装されたりしてしまったものを少しずつオリジナルに近づけるため修復作業中。
ガイドツアーに参加したのですが熱心な解説者だったのと聞き手も熱心で、
1時間半以上にも説明が及んだため撮るチャンスも逸し、内部写真はあまり撮れませんでした。
ダイニング・ルーム入口の2階部分。対称に配された上下可動窓の間には小さめの暖炉。
暖炉のサイドにはモリスが好んだ青の絵柄を描いたデルフト陶器のようにオランダから白無地の
タイルを取り寄せて手書きの絵付けをしたもの。
壁紙は庭の草花の生態を尊重した図案が特徴。
家具、絨毯、タピストリー、タイル、ステンドグラスなどすべてにわたってこの家に合うように、
デザインしたものを制作して使用しました。
内装を完成させる過程で習得した経験のもとにモリスと友人たちは(後述)1861年に
絵画、彫刻、調度品、ステンドグラス、金属の美術工芸品制作の工芸家集団
を立ち上げて住宅、公共の建造物、教会の仕事を請け負うようになります。
友人たち
フィリップ・ウエップ→内装設計、家具、調度品、食器、ステンド・グラス
エドワード・バーン・ジョーンズ→ステンド・グラス、刺繍、タピストリー原画
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ→ステンドグラスの原画
フォード・マドックス・ブラウン→ステンドグラスの原画
ピーターポール・マーシャル→アマチュア画家
チャールズ・フォークナー→営業
ロンドンにあるヴィクトリア&アルバート・ミュージアム(V&A)の中にある
グリーン・ダイニング・ルームは彼らによって1867年作られました。
この部屋は数年前に改修、修復されています。
モリス商会作 グリーン・ダイニング・ルーム(V&Aミュージアム リンク先、写真画見られます。)
ウイリアムモリス画のキャビネット(V&Aミュージアム)音声での解説付き
Edward Burne-Jones & William Morris, 1874
エドワード・バーン・ジョーンズとウイリアム・モリス二人の写真。 (V&Aミュージアム)
詳しくはナショナルトラストのRed Houseのページで解説、アクセス、開館時間などの詳細がわかります。
色々なところでウィリアムモリスの名前を聞いたような気がしますが、
どんな人なのかいまいちよく分かっていません^^;
アーツ&クラフツ運動を率いた方なんですね。
by ミカチ (2009-10-02 11:07)
レンガの建物って、素敵ですね。
タイルの絵もとても素敵です!
by youzi (2009-10-02 13:25)
素晴らしい家ですよね。
№1~3、とても興味深く拝見しました!
テレビで見たことがあったのですが劣化が気になっていました。
でも、オリジナルに近づける修復作業中なのですね、安心しました。
by せついぬ (2009-10-02 13:26)
ぜひとも行きたい!
さらに高額な遺産相続で
困ってみたい(笑
by TOMO (2009-10-02 13:36)
芸術家たちのコミュニティーをつくる、
って、ウィリアム・モリスって、そんな壮大な夢を持ってた人なんですね。
by cjlewis (2009-10-02 13:39)
とても落ち着いた室内ですね。
こういうところで構想を練ったのでしょうねぇ。
by cocoa051 (2009-10-02 13:41)
ミカチさん:
日本でではウイリアムモリスの名を壁紙とかプリントとかで
よく知られているようです。
過去の歴史にあこがれながら生活の質を高めようと働いた人でしょうね。
by いっぷく (2009-10-02 15:11)
youziさん:
レンガ造りの建物は重厚感も備えていますね。
タイルまでこだわって絵付けするとはこだわりが出ていますね。
by いっぷく (2009-10-02 15:14)
せついぬさん:
モリスもどれだけ壁紙や天井に描いた絵が持つのかわからずに
進行させたようです。
やはり施工後100年以上もたつとはげ落ちてしまうものですね。
これから長い月日をかけて修復されるでしょう。
家具なども散逸したものあるのですがオリジナルの姿で見たいものです。
by いっぷく (2009-10-02 15:19)
TOMOさん:
行くなら花の咲く初夏にかけてが美しいです。
モリスは富裕な家に生まれて長男で9人の兄弟がいました。
育った家もまるでお城のようです。
by いっぷく (2009-10-02 15:23)
cjlewis さん:
モリスは若くして莫大な財産を受け継ぎ
それに気前も良かったのです。
26歳にしてこの家を建てるにあまる財力はあったし、
理想社会を追求したんですね。
by いっぷく (2009-10-02 15:32)
cocoa051さん:
周囲から聞こえる音と言えば鳥の声くらい。
恵まれた環境で芸術を追求するのに申し分ないですね。
by いっぷく (2009-10-02 15:34)
5枚目の写真のような形って何て言うんですかね?
アーチでもないし・・・私こういう形がとても好きでして(^_^;)
by ホタルの館 (2009-10-02 15:45)
修復が進んだ5年後10年後に再び訪れてみたい場所です。
by beruden (2009-10-02 17:18)
ホタルの館さん:
これはアーチですよ、あえて言うなら尖塔アーチ形ということです。
by いっぷく (2009-10-02 18:22)
beruden さん:
家具などはオークションにかけられてしまったものもあるようですし、
ロンドンのV&Aミュージアムにも展示されています。
オリジナルの姿を見たいですね。
by いっぷく (2009-10-02 18:24)
上海に来てから、新しく買う家具や雑貨のほとんどはIKEAのものです。
友人の家に行くと必ず一つ二つ同じものがあります。
もう少し個性のある部屋にするのが今の課題なので、
こういうこだわりぬいた家を見ると考えさせられます!
by fogliolina (2009-10-02 20:34)
周囲が果樹園、庭には四季折々の花って、すてきですね!
赤レンガに白い花や白いベンチが映えますね。
でも、やはり維持していくのは大変なんですね。ナショナルトラストの管理に
なって安心です。
暖炉にタイルが使われているのは、意外でした。暖炉の上、これレンガですよね。入り口と同じアーチ型になっているとは、さすが、ですね。
落ち着いた飽きのこない内装に、モリスらしさを感じました。
by TaekoLovesParis (2009-10-02 20:55)
様式にとらわれない家の造りが良いですね。
窓も扉も、家の雰囲気全部が、建て主の息遣いを感じさせてくれるみたい。
建築は総合芸術だ、といった建築家がいましたが、頷けます。
by ナツパパ (2009-10-02 20:59)
この庭、イギリス人の作品という感じですね。
建物の雰囲気とあっています。
by YAP (2009-10-02 21:24)
素敵な建物ですね。複雑な形をしているのに、
統一感があって、屋根回りのカーブが
優しい雰囲気を出していますね。
見に行ってみたいです。
by michie (2009-10-02 22:13)
植物の縦のラインと建物の屋根のラインが調和して素敵ですね。
モリスの友人たちも錚々たる顔ぶれ!
ロセッティのデザインしたステンドグラスとは!いつか私も見てみたいです♡
by てんとうむし (2009-10-02 23:21)
大きい建物ですね。
モリスのその後の仕事の原点となった建物なんですね。
是非訪れたいです。
by nyankome (2009-10-03 00:37)
石造りだとやっぱりすごい歴史を積み重ねますね~
by とり (2009-10-03 07:38)
おはようございます。
この時代文明といいますか産業が構造的にも変化していたため、モリスたちの活動はとても貴重だと認識しています。この後、バウハウスへと有る意味受け継がれている事からもとても意味ある事だと思っています。
一度は行きたいところです。ガイドさんもとても熱心だということなので、ふらっと行きたいなあ。イギリスはちょっと遠いです。^^;
by doudesyo (2009-10-03 09:32)
赤煉瓦がいいですね。
by tanaka-ma3 (2009-10-03 10:34)
alcoveは憧れです。ちょっとした狭い空間は、心に安らぎを齎します。
by アヨアン・イゴカー (2009-10-03 13:44)
とんがり屋根のある井戸、お洒落ですね♪
当時、流行されていた文明の批判で、
自分自身で制作される精神に感服致します。
もし、私にできるなら・・・考えさせられます。
by 御心 (2009-10-03 15:10)
訪問・niceありがとうございます。
レンガっていいですよね。
by あっちゃん (2009-10-03 23:03)
才能のあるひとですから、すべてにこだわりたい気持ちは良くわかりますねぇ。
作っている時は、とても楽しんだことでしょう。
後の持ち主によって、変えられてしまったところもあるようですが、
これほどの建物をオリジナルに戻すのは大変でしょうね。
by 1275GT (2009-10-04 00:21)
お金がないと、これだけこだわった建物はできませんね。
建てるのもそうですし、保ち続けるのも大変。
なかなか楽しみながら暮らすということはできませんが
世の中には裕福な人たちがいて後世に残す役割も果たしてくれているわけですね。
ぜひ、自分の目で見て感じてみたいものです。
by dot-dot (2009-10-04 11:25)
こんにちは。
No.4のイングリッシュ・ガーデン、とてもすてきです。
私は日本庭園より断然イングリッシュ・ガーデン派です。
拡大写真、すばらしいです。楽しませていただきました。
by sig (2009-10-05 14:32)
fogliolinaさん:
ロンドンにもIKEAがあってやはり店舗面積が大きくて安いです。
個性的な部屋作りというわけにはいかないでしょうが、
魅力あるものもありますね。
by いっぷく (2009-10-05 21:01)
Taekoさん:
ナショナルトラストは管理が行き届いていて修復にも意欲的で
いいシステムだと思いますね。
日本にもこのような組織ができればいいと思うのですが。
暖炉にタイルを使用するというはなかなか素敵ですね。
まだ修復半ばで物足りない部分もありましたが、
完成の暁には再訪したいと思います。
by いっぷく (2009-10-05 21:10)
ナツパパさん:
モリスはこの家を建てるにあたって北フランスを旅行しました。
広い視野で過去の建築も確かめたかったと思います。
内装から家具までデザインしたのですから総合芸術ですね。
by いっぷく (2009-10-05 22:55)
YAPさん:
やはりイギリスの国民性が出ますか。
う~ん、イギリスですね。
by いっぷく (2009-10-05 23:00)
michieさん:
屋根も雪が滑り落ちるほどの急こう配ですね。
井戸のデザインとも合っていますね。
モリスは対称をを嫌ったようです。
by いっぷく (2009-10-05 23:05)
てんとうむしさん:
MMF(モリス・マーシャル・フォークナー商会(1861-75)は
教会堂のステンドグラスを制作しています。
オックスフォードのクライスト教会のは大規模なステンドグラスです。
by いっぷく (2009-10-05 23:18)
nyankome さん:
モリスは建築家とはテキスタイル、ガラス窓、内装までもすべてにわたって
できることを目標に考えていました。
by いっぷく (2009-10-05 23:25)
とりさん:
木造と違って100年たってもあまり外観には変化がない
のがいいですね。
by いっぷく (2009-10-05 23:28)
doudesyo さん:
モリスは当時、店で売られている家に必要な商品に満足するものは
ほとんど無かったと言っています。
その結果売られていないから自分たちで作りだそうという意気込みも
そうとうなものだったようですね。
by いっぷく (2009-10-05 23:43)
暖炉の煉瓦の組み方もオシャレな模様ですね。
タイルまで自分で絵付けとは♪
暖炉の左横の窓に斜めに見えてる煉瓦は、
2階が出窓のように張り出した脚の部分かしら。
by Inatimy (2009-10-06 06:04)
tanaka-ma3 さん:
ロンドンはレンガ造りが多いですね。
by いっぷく (2009-10-06 06:31)
アヨアン・イゴカー さん:
ちょっとした空間、やわらかな曲線、建物に
安らぎを加えてくれますね。
by いっぷく (2009-10-06 06:34)
御心さん:
とんがり屋根の井戸は建物との調和を図ったデザインだけに
当時としては異端なデザインだったのでしょうね。
文明批判は新しい時代への萌芽になることを予感させます。
by いっぷく (2009-10-06 06:38)
あっちゃん さん:
レンガ造りでも地方によって色が微妙に違いがあるんですね。
ここは赤レンガですが湖水地方のはちみつ色も素敵です。
by いっぷく (2009-10-06 06:41)
1275GT さん:
すべてにこだわることが彼のやりたいことに合致していたようで
これがその後のビジネスへとつながりましたね。
移動できる家具などはオークションにかけられてミュージアムに
入ってしまったりしてますので買い戻すのは難しいようです。
by いっぷく (2009-10-06 06:45)
dot-dotさん:
モリスは莫大な遺産を受け継いでそれを
芸術へと惜しみなく注いでいきました。
同時に人生の目的を芸術に見出しました。
by いっぷく (2009-10-06 06:50)
sigさん:
敷地の過半を植物に埋め尽くされているというほど緑の中に
赤レンガの館があってモリスは植物を愛でていた様子がよくわかります。
規則性がないような植栽にモリスの独創の意思が貫かれているようでした。
by いっぷく (2009-10-06 06:58)
Inatimyさん:
モリスはタイルを製造するにあたってすでに合理化された大量の
タイル製造方法を確立していたオランダから仕入れることにしました。
未加工白無地の状態で仕入れてそれに手書きで絵付けをする方法をとったそうです。
>暖炉の左横の窓・・・・
そうですねその部分です。よくわかりましたね♪
by いっぷく (2009-10-06 07:06)
こちらでは夏にモリス展がありました。インテリアの再現などもありましたが...いっぷくさんの写真を見ると、一生懸命再現しようとした努力を感じました。一方で、写真によって、アーツ・アンド・クラフツの方向性が、(どんな本を読むよりも)すんなりと胸の内に入ってくるのがわかります。
by room7 (2009-10-10 22:40)
room7さん:
当時の時代の背景を考えるとモリスの家づくり考えは少数の異端だったと
思いました。量産品を安く手に入れるのは産業革命以後の時代の流れでしたからね。
この家を丹念に見歩くとモリスの目指した方向を理解するうえでも貴重な遺産ですね。
by いっぷく (2009-10-11 07:00)